輝く野菜ソムリエ 第11回 川島洋子さん
野菜ソムリエの累計受講者数は7万人を突破。
資格取得後は仕事に活かしたり、地域の仲間と共に活動したり、趣味として楽しんだり、
料理教室や講座を開いたり。
その活かし方は百人百様です!
資格を活かして輝く野菜ソムリエをご紹介してまいります。
vol.11 川島洋子(かわしま ようこ)さん(宮城県)
2004年 野菜ソムリエ取得
2005年 野菜ソムリエプロ取得
2019年 野菜ソムリエ上級プロ取得
■受講のきっかけ
実は私自身は、昔野菜をあまり好きではありませんでした。野菜を好きでなかった割には、大した病気などもせずに大きく育ちましたので、野菜の必要性を感じたことがありませんでした。しかし、会社員時代に娘2人を出産し、日々家族のためにバランスの良い食事を考えながら準備する中で、自分があまり好きではなかったため野菜の料理のレパートリーが少なく、食卓に上らないことに気づきました。そんなことをぼんやり感じている時に雑誌で「野菜ソムリエ」という資格を知り、退職を機に、野菜ソムリエを受講してみることに決め、毎週仙台から東京へ通って野菜・果物について学びました。
そこでは毎回、これまで知らなかった、考えてもみなかった野菜たちの奥深さに触れ、発見と感動が多く、すっかり野菜に魅了され、好きではなかった野菜についてもっと学びたくなり、そのまま中級コース(現在の野菜ソムリエプロコース)にまで進学し資格を取得しました。
それからかれこれ20年。ずっと野菜ソムリエの資格を持って走り続けてきました。
■資格取得後
野菜ソムリエプロの資格取得後、レストランでのイベント開催などの活動をするようになりました。そんな中、お声をかけていただき2007年から地元のテレビ番組で旬の野菜の産地・生産者さんの紹介とその野菜を料理する、というコーナーを担当させていただくことになりました。
担当は月に2回でしたが、毎朝7時20分頃からスタートする番組なので、朝は5時過ぎにスタジオ入り。事前にロケにいき、当日はその野菜を使ったお料理を展開する、というコーナーで、色々と大変なことも多かったですが、コロナ禍で、スタジオで調理などができなくなる2020年まで続きました。宮城県内の生産者さんを相当数、あちらこちらを取材して回れたことは、今の私の全てにおいて糧になっています。取材では最後の収穫のところだけをさせていただき、言えば一番良いところだけを体験させてもらっていたわけですが、どの生産者さんも、生活者の私たちに美味しい農産物を届けてくれるために大変なご苦労をされていることを知りました。
ずんだの原料枝豆の収穫
ごぼう堀は専用の機械で
スタジオでは調理をしながら、野菜の魅力をお伝えしてきました
この経験は、食育の講演やお料理教室、農業大学校での授業など様々な野菜ソムリエの活動をさせていただく中で、野菜・果物の魅力だけでなく、農業の大変さ、大切さを伝える原動力となりました。
そして2011年の東日本大震災が一つの変わり目になりました。復興に携わりたいという気持ちから震災の翌年から仙台市役所の農林部で嘱託職員として勤務をし、六次化やグリーンツーリズムなどを担当しました。それまでは一般生活者に向けた仕事が多かったですが、仙台市の職員として生産者と関わる仕事を通じて、別の立場での経験を積むことができました。このことは食産業の支援という現在の仕事にも繋がっています。
活動の一つとして、そばは種まきから収穫、蕎麦打ちまで1年を通じた体験会を毎年実施しています。
一列に並んでまっすぐ種をまいていきます。
生産者の皆さんと一緒に、打ち立てのそばを食べる
3年目からは新そば祭りも開催。地元の祭りとして定着しました
また2014年からは在来作物研究会の活動も始め、宮城県内の在来作物の掘り起こしや保存・普及などの活動もしてきました。「在来作物は生きた文化財である」という言葉を胸に、在来作物の種を残そうとしてくれている先人たちに敬意を払い、そしてその後ろには大事な食文化がつながっていることを伝えながら、私たちの後にも繋がっていくように、と細々ですが続けています。昨年は山形の野菜ソムリエの方と一緒に「小さな小さなかぶサミット」という、山形にたくさん残っている在来カブや、宮城、福島の在来野菜を集めて展示・販売会をすることができました。
野菜ソムリエとして様々な仕事をさせていただく中で、どんどん強くなっていったのは『持続可能な農業・農村』の役に立ちたい、という思いです。大震災の時に「お金があっても物が買えない」という経験をしました。有事の際の経験は時と共に忘れてしまいがちですが、もっと危機感を持ち食料自給率をこれ以上低下させてはいけないと強く感じました。もっともっと食料安全保障を意識しなければならないと。
また中級(野菜ソムリエプロ)の授業で、農業は生産以外にも水や環境、さらには景観に大きな役割を担っていることを学び、それまで考えたことがなかった農業・農村の大切さを知ったことを今でも覚えています。
そして自分自身が農業をしたいという思いも抱きました。非農家出身の私が、この歳で農家になることはとてもハードルが高かったですが5年前に仙台の西部・秋保温泉郷一帯で主に米や大豆、蕎麦を生産している生産組合に入れてもらいました。中山間地域なので、イノシシはもちろん、クマなど動物たちがしょっちゅう出ます。数十ヘクタールの田畑に電柵を回す作業だけでも本当に大変です。猛暑の草刈りもヘトヘトになります。昨年などは水が少なく、下流域では「上の奴らが水を止めるから、下まで水がこねー!」と、令和の時代にこの喧嘩?というような場面もありました。さらに気候変動でこれまで通りの生産方法では立ちいかなくなっているのも目の当たりにします。
生産組合の事務所からの眺め
そんな組合員約20名の平均年齢は69歳。日本の農業の縮図です。この組合を維持していくことはつまり、日本の農業の維持を考えていくことと同じだと思っています。
技術を学びながら、といっても年に一度の作業も多く、毎年教わり直すことも多々あります。どうやったら効率的に生産できるか、どうやったら魅力的な農業になるのか、担い手を補っていけるのか・・・悩みは多いけれども、大自然の中で作業をする心地よさに抱かれて日々作業しています。
■これからのこと
昨年、この秋保地域に一軒家を借りました。そこは、食の勉強をしたい人達がいつでも自由に集まれるように、キッチンが広い家です。仙台駅からは少し離れているので、不便さを感じるかもしれません。でも、農業・農村を身近に感じてもらえるような場所です。食にまつわる様々なことを一緒に学び、特に野菜ソムリエの資格をとった方のフォローができるような、そして野菜ソムリエを目指したい方が気軽に来れるような場所にしたいと考えています。野菜ソムリエ育成のため、体験付きの説明会や地域校もヨチヨチ歩きながら、なんとか歩みを進めています。
2月にコミュニティとトマトの勉強会を共同開催
ここまでやって来れたのも、いつも一緒に活動してくれる野菜ソムリエの仲間がいたからです!本当にありがとうございます!!
だから、せっかく資格をとった皆さんが迷子になってしまわないように、これからも「この資格をとって本当に良かった」と思っていただけるような、楽しい、ためになる企画を立てていこうと思います。
日本野菜ソムリエ協会には「日本の農業を次世代に継承する」という理念があります。
野菜ソムリエの力を集結すれば、日本の農業の未来のためにできることがきっとあると思っています。「一人の一万歩ではなく、一万人の一歩」のキャッチフレーズを胸に、これからも野菜ソムリエとして活動していきたいと思います。
facebook:https://www.facebook.com/yoko.kawashima.946
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野菜ソムリエとして20年走り続けてこられた川島さん。
その想いと行動に感服しました。
川島さん、ありがとうございました!