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【東京】実るプロジェクトvol.5 ~きのこ&オリーブオイル~

P8070015_2 P8070013 日時:2007年9月7日(金)19:00~21:00
講師:田中 稔 先生
会場:協会本部渋谷第一教室


野菜ソムリエとして大きく実って欲しいというコンセプトで企画された「実るプロジェクト」。
季節野菜の基本料理の調理デモと食育の話で構成されています。今回で5回目。
講師は、名古屋のクッカリーの授業で大人気の田中先生。シニア講座の講師もされています。フードコーディネーターとしての様々な経験に裏打ちされたお話は、とても興味深いものです。
今日のテーマ野菜は『きのこ』。食育は『油のお話(オリーブオイルを中心に)』です。
本講座開催前に、『野菜の切り方教室』というオプション講座も開催されました。

【切ることは、大切なこと】P8070011
私は“実るプロジェクト”に全て参加しているのですが、「野菜の切り方教室」は初参加でした。
生まれつき不器用な私にとって“避けて通りたい道”でしたが、考えが変わってきたきっかけは、以前「実るプロジェクト」に参加した時に耳にした田中先生の言葉に感銘を受けたからです。

「生活者に野菜の魅力を伝えるとき、理屈で何百回説明するよりも美味しく調理したものを食べていただいた方が良い。1回で分かってもらえる。」
「『食べたい!』と思わせる盛り付けは大事。家庭料理ではおろそかになりがちだけど、」
『どうやって美味しそうに見せるか?』を家族のためにも考えて欲しい。」

田中先生の料理を何度か食べてみて、幸せな気持ちになったり、実際に作ってみたりした私にとって、これらの言葉は実感が湧くものでした。 「やはり包丁は上手く使えないと…」と考え、思い切って参加。

P8070009野菜をシャープに切るために重要なのは、次の2点。
 ▼よく切れる包丁を使う
 ▼包丁を大きく滑らせるようにして切る

そうすれば、細胞を潰さずに切れるので、水分の流失を少なくでき、残った野菜の鮮度も保持しやすくなります。また、均一な大きさでシャープに切れば、単に食べやすくするだけでなく、火の通りを均一にでき、栄養的損失を少なくできます。切る事は、美味しい料理を作る基本になるわけです。
包丁が素材に与える影響を実感したのは、人参を切ったとき。私の包丁で切った断面と先生のとでは、手触りが全く違いました。私のはザラザラ。先生のはツルツル。先生の包丁を貸していただき、使ってみると、野菜に包丁が吸い込まれていく感じがしました。余計な力が要りません。同じ包丁でこんなにも違うのかと思う程の差でした。

P8070012今回は2回目の参加者が多かったので、やや高度な飾り切りにも挑戦することになりました。
大根のかつら剥き、かぶの菊花切り、人参のシャット切り(人参のグラッセを作る時の切り方)、しょうがのみじん切りなど。初参加の私には悪戦苦闘の1時間でしたが、本を読むだけではイメージが掴めなかった切り方を直接教えていただけたのは、貴重な体験でした。あとは練習あるのみ!?
田中先生は、参加者全員の包丁を講座の前後に砥いで下さいました。これは、田中先生が主催する料理教室でも行っているそうです。先生がいかに切る事を重視しているかが分かります。

【オリーブオイルの話】
オリーブの果実を絞ってろ過しただけで、科学的処理が加えられていないものが、バージンオリーブオイル。オリーブオイルテイスターによる官能検査と酸度の割合に応じて4段階に等級分けされます。官能検査で全く欠点がなく、酸度が0.8%以下のものが、最高級のエクストラバージンオリーブオイル(酸度は鮮度を表します。値が低いほど新鮮)。精製したオリーブオイルにバージンオイルをブレンドしたものが、普通のオリーブオイルと呼ばれます。
また、オリーブオイルの風味は、品種や土壌、気候、収穫時期、摘み方、搾り方などによって異なります。香りや味、色は、ワインのようにある一定の言葉で表現するよう定められています(ex. 色:琥珀色 香り:ベルガモット 味:苦味のあるアーモンドetc.)。

オリーブオイルが注目され始めたのは、1950年代。アメリカの研究者によって、地中海地方に伝わる食生活をしている人々には心臓病や動脈硬化の発症率が少ないことが発見されてから。
オリーブオイルには、悪玉コレステロールだけを減らすオレイン酸が豊富に含まれています(全体の約75%)。また、微量ではありますが、抗酸化物質であるビタミンE、β-カロテン、ポリフェノールが含まれています。オレイン酸にも抗酸化作用があります。
動脈硬化の原因は、体内で活性酸素と悪玉コレステロールが増えることにより発生します。植物性油脂をオリーブオイル中心に摂り、穀物を主体に野菜・果物を大量に食べる生活習慣は、動脈硬化予防に効果的であると思われます。これは、“地中海式ダイエット(食生活)”と呼ばれ、後にフードピラミッドのモデルになったそうです。

世界のオリーブオイル生産量の90%近くは、スペイン・イタリア・ギリシャで占められています。
世界的にイタリア産の需要が多いため、輸入したオリーブオイルをイタリアでボトリングしたものが“イタリア産”として輸出されている事実があります。
これでは、収穫からボトリングまでをイタリア国内で行なった“純イタリア産”が圧迫されてしまうという危機感が、“原産地統制呼称制度(DOP)”の強化に繋がっているようです。
この認定を受けるには、収穫から搾油工場、瓶詰め工場にいたるまで特定の地域で行なわれた事を証明するため、生産履歴を原料まで遡って証明しなければなりません。また、厳しい基準を満たしたオイルを瓶詰めする分しかDOPのラベルが発行されないというのは、日本の有機JASの認定制度と似ています。

今回は、3種類のオリーブオイルをティスティング。
まず、コップに入ったオリーブオイルを人肌で温めて香りを嗅ぎ(実際は、28度くらいに温めるようです)、少量を口に含んでオイルに空気を含ませます。ワインと同じ要領です。口直しにスライスされた林檎とフランスパンを使うのは、面白いと思いました。
このティスティングを通じて、私は初めてオリーブオイルに辛みと苦味があるのを知りました。
辛みは、オリーブオイルに空気を含ませた時に喉で感じました。これには驚きました(思わず咳き込んでしまいました)。また、良質なオリーブオイルは、普及品に比べて油っこくないのがハッキリ分かりました。
今回は、3つとも成熟した果実から搾った黄色のオイルでした。機会があったら、早期に収穫された果実を搾った緑色のオイルを試してみたいと思いました。

【楽しいお話&試食】
今日のメニューは、4品。P8070052
 ▼きのこのかき揚げ丼
 ▼きのこと牛肉の紅葉おろし和え
 ▼自家製なめたけ
 ▼きのこペンネのゴルゴンゾーラ

名前を見ると難しそうですが、デモを見ると、料理が得意とは言えない私でも作れそうな感じがします。これには、「皆さんに家で実際に作って欲しい」という田中先生の願いが託されています。P8070018_2 P8070031
P8070030 私が毎回注目しているのは、野菜の下ごしらえと先生のお話。野菜の知識(切り方・使い方・保存方法・美味しい野菜の情報etc.)や料理のコツが、たくさん散りばめられているのです。例えば、
 ▼なぜ、茶碗蒸しや土瓶蒸しのぎんなんが潰れているのか?
 ▼松茸の選び方や香りを損なわずに焼く方法
 ▼サラダに使う野菜をパリッとさせるには? 

など、他多数。P8070029
時には脱線して、「飲食店ではどんな素材を使っているか?」や厨房機器の話をされたり、材料の栗を使って“くりせんべい”を作ったり。料理に関する質問にも熱心に答えて下さいました。
試食の時間、先生のお話を聞きながら参加者が黙々と食べていたので、「反応が無い!」と気にされていました。でも、その必要はありません。間違いなく美味しかったのです。
それは、お皿を見れば分かります。皆さん完食しているではありませんか!
田中先生が持つ豊富な知識と人を引き付ける話術は、魅力的であり、憧れです。聞き手のニーズに合わせて何をどこまで話すかを上手に取捨選択できるセンスは抜群だと思います。
田中先生のお話は、料理講師を目指す方だけでなく、野菜ソムリエとして生活者に話す場合にも非常に参考になるのではないでしょうか。

【感銘を受けた言葉】
“実るプロジェクト”への参加を通じて、田中先生の印象に残った言葉がいくつかあります。
例えば、
「日本には昔ながらの素晴らしい知恵がたくさんあるのに、それが伝承されないこの世の中が本当に良いのか?」
「『何故、あの食品は腐らないのか?』『何故変色しないのか?』『何故あんなに安いのか?』という素朴な疑問を生活者が持たなければ、良い食品は生まれない。」
「土環境が良ければ、きゅうりは真っ直ぐ伸びる。環境が良ければちゃんと育つのは、野菜も人間も同じ。」
「薬ばかりに頼るのではなく、自分の体の免疫力を上げる方法を考えよう。」など。

『これらの言葉の中に、現在発生している食の問題を解決するいくつかのヒントが隠されているのだろう。』

購入したての時よりも切れ味が良くなった包丁で調理しながら、そう思うのでした。

ベジタブル&フルーツマイスター  平田 実

健康情報を客観的視点から判断し、野菜・果物の魅力を分かりやすく伝えることができる
野菜のソムリエを目指しています。その方法を探究中。長野マラソンを愛する市民ランナーです。
http://forest6pixy.seesaa.net/