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【東京】売れない時代にモノを売る方法 ~ハードからソフトへの転換~

Rimg0495日 時: 2008年1月22日(火)
講 師: 日本ベジタブル&フルーツマイスター協会 理事長 福井栄治 
会 場: 協会本部渋谷第三教室

 東京は翌朝より雪との予報。冷たい空気が肌を刺す。
帰宅を急ぐ人々が行き交う平日の渋谷を協会本部に向 かった。

 今回のVMCのテーマは「売れない時代にモノを売る方法~ハードからソフトへの転換~」である。
会場を埋める二十余名の中には、一般の参加者や遠方からの参加者もおり、関心の高いテーマであることがうかがえる。

 私が理事長の講演に参加するのは3回目である。マイスター取得後、自分自身の理解が及ばなかったマーケティングを深く学ぶ必要があると感じ、受講を始めた。先の2回とも、青果物というジャンルにとらわれず様々に応用できる内容であった為、自分自身は販売に関わる立場ではないが、今回もすぐに申し込んだ。

 理事長の講演の面白さは、受講生への積極的な「問い」にあると私は考えている。「講演を聴く」というだけでなく、「考える」場を「そのとき」に提供するという積極的な働きかけによって、受講生は講演テーマの理解を深めることが出来る。その問いもユニークである。日常よく耳にして馴染んでいる事柄について質問されるのであるが、いざ答えようとすると非常に漠然とした答えしか浮かばないことに気付かされる。

【モノを売るとはどういうことか?】
Rimg0494_2  一番初めの問いは「モノを売るとはどういうことですか?」であった。販売の仕事であれば常々考えることかもしれないが、そのような仕事に携わっていない私は考えたことがなかったように思う。
「モノを売る」とは「価値と貨幣を交換すること」である。つまり売れる、売れないは、「価値」に関わる現象ということになる。

【価値観の多様化】
 次の問いは「多くの人が“一万円の価値”があると感じるものは何ですか?」であった。
受講生からは「宮崎県産マンゴー」「マッサージ」などが挙がった。しかしこれらは、隣人も同じように1万円の価値があると感じて購入に至るかというと、必ずしもそうではない。これによって、いかに価値観が多様であるかが推測できる。
 「売れる」「売れない」に関わるキーワードは「価値」であるから、単純に考えれば「価値が上がれば売れる」はずであるが、現在では価値観が多様化したために価値を上げることが容易ではなく、モノが売れにくくなっているのである。
 かつてのモノがなかった時代や、社会主義国では価値観は単一であった。
  Value(価値)=Quality(質)÷Price(価格)
 この方程式が20世紀においてはすべてに通用していた。これに当てはめるならば、価格をさげ価値をあげれば売れるはずであるが、価格を下げても売れないのが現状である。
そのため現在においては「X」が加わり、
  V=Q÷P+X
となる。そして「X」は「Q/P」よりも価値に大きく作用する。
「+X」の部分がいかに差となるかについては、「Q/P」が同等と考えられる「世界的に有名なブランド」と、「そのブランドの職人が独立し新設したブランド」を具体的な例えにつかい、わかりやすく説明がなされた。

【ソフト化】
 Xとは何か。Xはかつて、一部のラグジュアリーブランドに関わるものであったが、現在はすべてのモノにXが関わるようになっている。野菜であれば機能性成分・価格など、人によって変わるそれぞれの求める価値観に関わるものであろう。そしてXが加わったことは、かつて20世紀に「いかに胃袋を満たすか」であったことが、現在は「人それぞれの心を満たすか」に変わってきたことにつながっている。
 モノを売買することは売り手が価値を説得し、買い手はその価値を納得して購入することとも言える。つまり価値観の共有がなされなければモノは売れない。そのために、モノそのものの価値(ハード)に新たに情報を付加することにより、コアに届く価値の増大を図るのである(これをソフト化と呼ぶ)。
 当然、その情報の発信の仕方、ターゲットも変わる。現在はCMに効果がないといわれている。大勢に知らしめるにはよいが情報が薄くなりがちである。また、昨今の偽装問題などで、売り手の信用が下がっている現在の状況では、中立性や第三者性が必要であり、さらにピンポイントに情報が届くことが価値観の共有の近道といえよう。

【価値観の共有】
 講演では「価値観の共有」という言葉が何度も強調された。価値観を共有するには、まず、売り手が価値観を持ち、自分の会社はどういう価値があるかをしっかりと認識することが大切である。しかし価値が漠然としたものでは意味がない。例えば自分の店の価値を単に「安全性」としても、そもそも自分で「安全ではない」という店は存在しないであろう。つまりその価値の認識が漠然としていたり、また単なる理想のような「現状とギャップのある価値」では買い手を説得出来ない。
 「あなたが最近素敵と感じたものは何ですか?」という理事長からの問いに、受講生から一つとして同じ答えは返ってこなかった。「素敵」と思うことについても、その思考が一致することは難しい。多くの人をターゲットにするために平均のニーズを探るのではなく、特定の人に何度も足を運んでもらうように顧客の選別もまた必要と思われる。

 そして前回の理事長の講演のテーマである「ブランディング」に話はつながっていく。
ブランディングとは「○○産××」といった識別機能しか持たないネーミングのことではなく、提供するものを自分自身が認識し、ユーザーが価値と思うものを約束するプロセスのことをいう。

Rimg0501 残念なことにここで講義終了の時間となってしまったが、理事長からはそのあとも質問のある受講者に個別の対応がなされた。
 私にとって普段関わることが少ない分野であるが、自分の仕事にも応用ができ、野菜ソムリエとしての活動にも必要な知識と考えている。より深い理解のために、このような講演にまた参加したい。


霜村春菜(しもむらわかな)ベジタブル&フルーツマイスター
大学の史学科研究室に勤務後、現在は謡曲教授をしております。仕事柄、普段も着物のため、野菜ソムリエ風着物で活動することも。
自分の目で見、体験することがモットーです。これからもいろいろな方のお話を聞き、青果物に関する知識を深めたいと思っています。



●参加者アンケートより●
・物を売る仕組みが理解でき今後の活動に役立てていきます。売り手の買い手の心理の差は、利益をもとめるだけの売り手の心理から生じると思いました。
・講義の内容は解りやすく、実際に聞いたり、読んだりというものも少なくなかったですが、「本気の本気」 というテーマは何にでもつながるものだし、行動の起爆剤にと考えます。私自身の今年のテーマは「行動」です。
・「自分達は何を提供しているのか」を考えることが大切。自分の仕事内容を見つめ直したいと思いました。
・自分の知らない話が聞けて視野が広がりました。
・社外の方の講義を受けるのは、違った視点があったり、実際の話があったりで、楽しいので、また機会があれば参加したいと思います。
・物を売るということについて意識を持ってやらないと売れないものを売ることができないという事がわかりました。
またそう考えるとどのように売っていけば売れるものに変わるのかということが勉強できました。
・とても充実していてたくさんメモしました。売るということは、生活すべてに対して必要でとても学べました。
・福井さんのお話わかりやすかったです。具体例が多いのが救いでした。
・モノがあふれる中で、なぜ売れないのか(買わないのか)少し理解できるような気がします。
・頭のどこかでは何となくわかっていても、本当に理解する(行動できる)にはまだまだ時間がかかりそうです。
・前回から続けて聞いたことにより、よりいっそう今回の理解が深まりました。直売に今後力を入れたいと考える私にとって知りえない多くのことが大変参考になりました。共感する人を説得するより良い情報とは何か自分でよく考えてみたいです。
・絶対、必ず役立てます。
・日々の業務や生活に追われている中でなかなかゆっくり考える時間がないので、考えるきっかけになった。
・マイスター協会を例にあげてくださったので、わかりやすかった。(一般の企業にあまり詳しくないため)講義をうける前に予習したい。
・もっといろいろなテーマの話をきいてみたいです。
・頭でわかっていても人にうまく説明できないことを解りやすく説明していただいたので整理された。
・実現するのは大変難しいと思いますが、意識して行動していきたいと思います。