【東京】「有機農産物を知る」
活動日時 : 2008年7月17日(木) 19:00~21:00
講 師 : NPO・日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)
株式会社 農水産ID(AAID) 藤井 淳生 先生
会 場 : 協会本部第三教室
「有機野菜」「有機農産物」・・・最近よく耳にします。
その響きには「体によい」「美味しい」「安全」な食品というイメージがあります。
では、果たして本当にそうでしようか?
そして何をもって「有機」というのでしょう?
また私達は、野菜ソムリエとして、有機をどう捉え、どう人々に伝えるのでしょう?
そんな有機農産物についての疑問、様々な角度からの「有機」について、
その世界を知り尽くした藤井先生が、笑いの交えた
熱弁で紐解いてくれました![]()
<有機農産物の定義>
農薬や化学肥料は原則として使用しないこと。
種まきまたは植え付けの時点からさかのぼり2年以上
(多年生作物にあっては、最初の収穫前3年以上)、
禁止されている農薬や化学肥料を使用していない水田や畑で栽培されていること。
有機農作物の生産者は、以上の要件を満たし、
生産から出荷までの生産工程管理・格付数量等の記録を作成していること。
<有機農産物の歴史>
もともと農業は全て「有機」であった。
20世紀初に科学や化学肥料の発達により、
「清浄野菜」と呼ばれるキレイな野菜が生まれ、生産は増大するが、
公害や環境汚染が問題となる。
1970から80年代に入り、有機農業が見直され、
「産直」・「有機野菜の宅配」などが発達し、表示制度が制定される。
<有機JASと諸外国の意識>
1999年有機JAS規格が様々な有機を統一するために制定される。
当時は様々な認識の「有機」が存在し、有機JAS規格は、市場の混乱を避けるため、
また消費者の選択に資するために制定をされた。
諸外国には、代表的なものとして
Organic(アメリカ)、Bio(ドイツ)、Eco(フランス)という有機がある。
諸外国では「国土・環境の保全」「持続可能な農業」という
「将来の人類のための有機」という意識が強く、
有機農産物の市場も大きい(10%前後)。
しかし日本では、個人・家族へ意識が帰属することにより、
有機市場は小さい(0.2%弱)のが現状である。
<有機栽培・特別栽培・慣行栽培の違い>
・有機栽培・・・定義の通り。次世代に配慮した安全性のある栽培(環境回復)。
・特別栽培・・・栽培期間中、農薬・化学肥料を5割以上減らした栽培(環境保全)。
・慣行栽培・・・農薬取締法・食品衛生法等、法律や基準を遵守した栽培(環境配慮)。
栽培物1品1品については、どの栽培法も安全性は変わらない。
しかしながら有機栽培は、環境全体を配慮した栽培法であり、
次世代の環境までも配慮した高次元な安全性を持っている栽培法である。
<有機JAS・検査のポイント>
有機農産物についての検査(それが確かに有機農産物か?という検査)は、
サンプル調査(農産物をサンプリングして中味を調べる検査)をするのではなく、
生産者へのヒアリングや圃場の実地調査である。
生産者へ適切な管理をしているかのヒアリング、
適切な汚染防止対策を取っているか等の実地調査により、
そこで育った農産物が有機農産物として認められる。
<有機農産物に対する疑問例>
ここでは有機農産物に対する、よくある疑問を挙げる。
●有機食品って「美味しい」?
結論から言うと、「個人の感覚」である。
有機栽培は、有機栽培をしやすい品種を選ぶことが多く、
比較的原種に近い品種が多い。
そのため味が濃かったり、酸味が強かったり、えぐみがあったりと、
F1品種のように画一的な食べやすい味ではないことが多い。
その味を「美味しい」と感じるか、また安心できることで
「美味しい」と感じるか、「美味しさ」は個人の感覚である。
但し、有機栽培は非常に手のかかる栽培法なため、
「作り手の想い」がかなり入る。
それが生活者に伝わることを生産者は望んでいる。
●有機食品って「安全」?
一般の生活者が考える「安全」は残留農薬にあると思うが、
その安全性は、有機栽培も特別栽培も慣行栽培もほぼ変わらない。
しかも一般に流通している食品の安全性は、法や基準によりかなり高い。
しかしながら「ゼロリスク」という食品もなく、
大事なことは「安全性」の根拠を知ることである。
有機栽培の優位性は「安全性」ではないのである。
●有機って環境に優しい?
環境に優しい側面、そうでない側面、両面があり、
一概に「優しい」とは言えない。
例えば有機栽培の肥料である堆肥の原料には輸入飼料があり、
それには外国の窒素入っている。
そのため、化学肥料を使っても土中の硝酸濃度は上がるが、
堆肥を使用しても上がるのである。
しかしながら、有機栽培は化学合成農薬などによる汚染物質の軽減を図り、
化成肥料による水質・土壌汚染を防ぐなど、
「環境保全型農業」として次世代への環境へと貢献している。
今の世代の「環境」だけでなく、次世代の「環境」までも考慮した栽培法である。
<農畜産物の環境/安全性/食育などの指標あれこれ>
日本の「食」を取り巻く環境には、
低い自給率、フードマイレージ、バーチャルウォーター・・・
様々な問題や指標や手法がある。
その中で、藤井先生の希望としては下記を挙げている。
●「利己的」から「利他的」へのシフト
●「仲間」=「世間」から「個人」=「社会」へのシフト
●「環境」の範囲の拡大 「里山」→「地球環境」へ
●「将来」へ残すもの
自分の安全性だけでなく、社会や世界へ広がる安全性、次世代へ引き継ぐ安全性、
ここに「有機」の奥深い意義を定義付けていきたい。
<受講後の感想>
ヘルシーさが売りであるレストランへ行くと、
「有機野菜のグリル」「有機野菜のサラダ」・・・
「有機」を使ったメニューによく出会う。
それに対する私たちのイメージは大方こうではないか。
「有機は美味しい」「有機は体に優しい」
私もずっとそう思っていた。
そして、この講座に参加することにより、
「有機」の真実、「有機」の奥深い意義を知ることができた。
「有機」とは、
単に「美味しい」とか「体に優しい」とか目の前の一元的な要素だけでなく、
世界規模の環境保護という空間的広がり、
ひいては次世代まで続く時間的広がりを見せる
多元的な要素をもって捉えなければならないもののようだ。
さて、ではこの奥深い「有機」の意義を、私たちは野菜ソムリエとして、
一般の生活者へどう伝えていくのか?
これは個人的な意見になるが、
最初のもとい「有機は美味しい」「有機は体に優しい」というわかりやすいイメージを、
広げていってもよいのではないかと思った。
まだまだ世の中には、自分が食べる「食」に興味のない人も多く、
作り手と生活者の間に「温度差」があるのが実情である。
まずは生活者「個人」に「有機」のわかりやすい良いイメージを持ってもらうこと、
それが大事なのではないかと思った。
最後に、私達は「野菜ソムリエ」である以上、
この「有機」についての真実を、きちんと知っておかなければならない。
恥ずかしながら単純に「有機は美味しい」「体に優しい」と思っていた私も、
この講座でやっと真実を知った次第である。
この真実を踏まえたうえで、一般の生活者に「有機」のよいイメージを浸透させる、
わかりやすい「きっかけ」を作る。それが私達「野菜ソムリエ」の役目ではないかと今思う。
講師である藤井先生、
このようなきっかけを下さった協会ご担当の方々に感謝いたします。
ありがとうございました。
プロフィール ![]()
趣味が高じて、
ベジタブル&フルーツマイスターの資格を取った会社員です。
家族や会社あってのマイスターであることを忘れずに、
まずは自分の大切な人々のマイスターになることを心がけています。
ベジタブル&フルーツマイスター
ベジフルビューティーセルフアドバイザー
フードコーディネーター
田中由子


