【1/22大阪レポート】美・食の愉しみ 京料理・萬重にて日本画のおはなし
美・食の愉しみ 京料理 萬重にて 日本画のおはなし
講師:今井 淳 氏
美術評論家
広島 海の見える杜美術館 学芸顧問
田村 圭吾:
京料理 萬重 若主人
ジュニア野菜ソムリエ
皆様、美術館や絵画展に赴いた時、絵の何を観てますか?何を感じてますか?
今井先生もおっしゃっていましたが‘
この着物綺麗ね’とか‘景色がいいね’とか?
あるいは、これから行くレストランのお話をしながら鑑賞してる方もいらしゃいます、と。
例えば60点展示があって、
1時間も観てる方は少ないと思いますが、
それって1枚たった1分なんですよね・・
正面から観ずに歩きながら横目で観てる感じでしょうか・・
高い鑑賞券を払っても1分も観てない・・自分もその一人だったので改めて驚きました
私も例にもれず、先ず絵の横にある解説文を読んで‘そうか・・’と思いながら、
観る、次の絵も先ず解説文から・・こんな事を60回もできるはずなく、
途中で疲れて
横目鑑賞になってしまう・・納得です。
難しい事が書いてあってると余計難しく見えてきてしまうって事ありませんか?
しかし私にも例外の絵があります。
イタリアのミラノにあるレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐に何故か魅かれ、
今までに3回行きました。
今は予約制なので日本から予約します。
最近は映画の影響もあり、ツアーにもよく組まれていて、
ある時そんな日本人の団体と一緒になりました。
30人1グループで中に入り、15分鑑賞できます。
最後の晩餐と反対側にもう1枚の2点しかありません。
そして待望の食堂に入りました。
が、しかしツアーの方々は横目見学で‘ふ~んこれがそう・・’と言いながら通り過ぎました。
あっという間に広い食堂には私と監視員の方だけになってしまいました。
折角12時間以上も飛行機に乗ってわざわざやって来て、数分は勿体ない・・。
特にこの絵は壁に書かれてあるので、どうやっても日本で観ることは出来ないんですから・・
お陰で私は10分以上独り占めできますが。
さて、本題に戻り、日本画の観方ですが、
先生は皆さんいい絵の意味を探してるとおっしゃいます。
その答えはいい物を観なさいと。
具体的には??10年位したらわかるそうです。
ならばとその美術館の売店でポスターやはがきになってる絵を観るのもひとつの方法でしょう。
そもそも何故‘絵’なのでしょう?
風景も人物も絵より写真、写真より本物の方がいいに決まってる。
絵には何があるんでしょうか?
私達は何故か日本画と洋画と言います。
西洋画の洋画なら東洋画になる筈が日本画と言います。
それはきっと独特の文化だったのでしょう。
日本画は流派の師匠から代々受け継ぎ伝えていく、つまり伝承してきました。
それにはその人個人の感性・個性は必要なく代々の教えを守ってきました。
丸山応挙の孔雀のように孔雀といえば決まった構図があったそうで、
お正月の掛け軸は松竹梅(冬の寒さでも緑濃く、
一番先に咲く花でめでたい)の冬の寒さに気品高い香りを求めて好まれた。
また干支の構図も決まりごとがあり、
例えば筍の絵これは龍を表し、海に浮かんだ金色の一艘の船の絵、
これは船の進んだ跡が蛇のように見えるので巳年に飾るといった風に。
掛け軸の上部は遠くの景色、
下部は近くの景色で遠近感を感じさせる方法も決まりごとのひとつだったそうです。
しかし江戸の頃から少しずつ書き手の個性が入って、
欧州で遠近法で書かれた絵やリトグラフ、
写実的な絵画の影響を受けた人の絵が変わってきたそうです。
先生は観方のヒントを教えて下さいました。
上村松園の‘待月’は黒の絽の着物を着た婦人が窓際に後ろ姿で立っている絵で、
何も知らない私なら目が行くのは‘うなじ’や着物などでしょうが、
ここで観るポイントとして、あおいでないうちわを持ってるということは、
さっきまで暑くてあおいでいたかも知れないが、もう今はあおぐほども暑くない。そして後ろの柱や窓のさんが側面より若干明るい、そして何やら上を見上げてる・・多分、うちわで涼を取りながら月を待っていたらちょうど月が出てきてそれを見上げた瞬間と想像できる。
そう!ポイントは想像力です。
一瞬の時を描いたもの、静と動の対比、時間の推移、空間・・・
1枚のその絵に描かれた物から描かれていない事、物、時間などを想像する。
他には、稲穂にすずめの絵、すずめは何やら体勢がおかしい・・何故か?
よく観ると、稲穂は折れてるものがある、
すなわち稲穂に飛びついたすずめの重さに耐えきれず折れた稲穂から落ちる瞬間のすずめだから、
おかしな体勢になってる。
別の絵で柳が2本、下の方でひっついている、
柳はそれぞれが風にのって揺れるイメージがあるが、
ひっついてるのはさっきまで雨が降っていて濡れたせいだろうか・・
柳は川の近くにある事が多く、この木の近くにも川が流れているのだろうか・・
一瞬の絵でここまで想像出来たらすごく楽しいですね。
また男女、老若でわかる絵、実感できる絵も違ってくるはずです。
その絵に見えないものを想像するのが、日本画の奥ゆかしさなのかなと思いました。
最後に先生は20歳代、40歳代、60歳代、80歳代それぞれの経験で
絵を観ることでそれぞれの思い出がまたよみがえると。教えてくださいました。
今までの観方とは全く違う観点から観ることで違う世界が見えてくると
もっともっと楽しめると思います。大変楽しく、納得しきりのお話でした。
さて、お庭の見えるお座敷に場所を移し、お食事が始まりました。
八寸は、ねいもの胡麻味噌掛け、揚げごぼうの甘辛煮、慈姑せんべいなど、お造りの後は
海老真丈のお椀、美味しいお出汁に珍しい嫁菜、つる菜が入ってました。
酢の物の龍飛巻は
酢で〆たお昆布に生姜を芯にしてヒラメや鯛を巻いたもので、
京都のお正月にはかかせないものだそうです。
小さいマイクロラディッシュも頂きました。
聖護院大根と鰤の炊き合わせは京都ならでは。
お鍋の具の蕪がゆでたものと生のものの2種類入っていて、
食感と味の含み具合の違いが面白かったです。
揚げ海老芋の3種食べ比べは京都、磐田、富田のものでした。
さすが京都の海老芋は味が濃く、ねっとり感が美味しかったです。
季節先取りのうすいえんどうのせいろ蒸しご飯と自家製の千枚漬と赤かぶ漬まで美味しく
全部頂きました。水
物の柚子釜柑橘羹も美味しかったです。
お食事の途中も京都コミュニティの藤田代表から京都ブランド野菜、
京野菜についてのお話や、田村さんからもお料理に使われたお野菜のお話、
またそれを実際に見せてくださったり、炊き合わせで、
鰤と蕪、鯛と大根では何故いけないのか?というお話や、‘
おばんざい’という言葉は昔から使われていた言葉ではないということや、
今でも市場では聞き間違い防止も兼ねて水菜は‘きれば’、壬生菜は‘まるば’
と言われているとか、
萬重さんのひざあてには二十四節気が描かれてあり、
その中のいくつかについてもお話くださいました。
京都の料亭は特に敷居が高く、一見さんは伺えないイメージがありますが、
田村さんは’私の知ってるお店で初めてのお客様をお断りになるお店はありません‘
とおっしゃてましたので、安心して伺えますね。
しかし、なかなか機会がないと伺えないのは確かで、
落ち着いた趣の部屋で美味しいお料理を頂いてると、気持が豊かになります。
萬重さんのお座敷に飾ってあった絵もゆっくり拝見できず非常に残念でしたが、
御玄関から正面に見える鹿のは迫力があり、
すごく綺麗で、また伺ってゆっくり見せて頂きたいと思いました。
レポート作成者 西前史子(野菜ソムリエ)





