「復興支援チャリティーイベント~奥田シェフと語ろう 今後の日本の農業と被災地の現状について~」
3月11日東日本を襲った未曾有の大震災は、建物・人的被害のみならず「放射性物質漏洩」という日本の災害史上かつてない非常事態を招きました。それにより政府から出荷制限指示が発表され、制限解除後も風評被害により被災地の農畜産物や水産物は大きな打撃を受けています。
今回はそうした農産物や被災地の現状、また今後の日本農業について山形庄内のイタリアン「アル・ケッチァーノ」オーナーの奥田政行シェフと語り合おうというチャリティーイベントです。
奥田シェフは今回の震災後いち早く被災地に入り炊き出しを行い、現在も続けておられます。庄内の「アル・ケッチァーノ」で仕込みをした食材を、数時間かけ岩手県内のフレンチレストランに運び最終準備を整えたのち各避難所を回るそうです。今日はその岩手のフレンチ「ロレオール」オーナーの伊藤勝康シェフもゲストスピーカーとしてお見えになっていました。
奥田シェフ・伊藤シェフ・また岩手県職員の方々から現地の状況のお話を伺いながら、岩手の食材を中心にしたお料理をいただきます。
まず参加者一同「岩手のりんごジュース」で、今回被害に遭われた方に向け献杯しました。
「岩手のやさいのアルケ風バーニャカウダ」
岩手産のラディッシュ・にんじん・ミニだいこん・プチヴェール・春菊を特製のバーニャカウダソースでいただきます。このソースはカリフラワーをコンソメで煮てミキサーにかけ、アンチョビとニンニクで仕上げたもの。野菜の旨みを最大限に引き出すやさしいお味のソースでした。
「今は幻・・・イサダのクリームソースフェデリーニにセリを乗せて」
イサダとは「ツノナシオキアミ」のこと。
イサダ漁が始まると地元の人は春が到来したと感じるのだそうです。淡い色のパスタソースと散らしたセリの緑色、そして上に乗ったイサダの桜色が美しいパスタです。
親潮と黒潮がぶつかる「潮目」である三陸沖は世界を代表する漁場のひとつ。原発から出た汚染水の影響が気になるところですが、奥田シェフいわく海流の流れを知ればどこが安全かはわかるとのこと。太平洋沖で取れた魚はすべて危ない・・・こんな間違った情報こそ風評被害の発端となるのですね
「アルケ特製 岩手の長イモと白菜のサラダ」
長イモの粘りを生かしたシンプルなサラダです。フェンネルの香りがアクセントになっています。当初ちりめんじゃこを加える予定だったそうですが、お客様のお一人がフェンネルを持ってきてくださったのでそれを使う事にしました。ちりめんじゃこはフェンネルと喧嘩してしまうため取りやめたとか。
奥田シェフのお料理はどれもシンプルに見えて、実は計算し尽くされています。私たちはつい次から次へと食材や調味料を足してしまいがちですが、シェフいわく大事なのは「引き算する勇気」だそうです。
「奥州牛と赤牛の食べ比べ 岩手の山ワサビとアルケのスペシャルマスタード」
サシ(脂肪分)が入りにくい赤牛は肉質が締まり、奥州牛はサシの分だけまろやかな味がしました。ぴりりとした風味とシャキシャキとした歯ごたえが特徴の山わさびが付け合せ。辛味の上手な出し方も教えていただきました。畜産物もかなりの風評被害を受けているそうです。
「発芽玄米とお湯」
発芽玄米をカップに入れお湯を注ぐと、玄米の香ばしい香りが漂います。口に含ませるとステーキの脂分もすっきり流れます。
「キャラメルのムース」
「堀口珈琲研究所とアル・ケッチャーノが生んだオリジナルブレンドコーヒー」
被災地の食材をどんどん食べて、被災地の生産者を応援したい・・・今回のイベントの素晴らしいお料理を食べて率直にそう思いました。しかし原発の影響を諸に受けている福島県の産地はさらに深刻です。この会に先立ち、福島県郡山で農業をしている野菜ソムリエの藤田さんから福島の状況についてのお話がありました。理不尽な返品が後を絶たない中、自信を持って育てた野菜を「安全だから買ってください」とは言えない葛藤。時折声を詰まらせながら語る生の声はとても苦悩に満ちていましたが希望を忘れず前向きな姿に大変心を打たれました
今私たちがすべきこと。それは氾濫する情報に振り回されず、何が安全で何が安全ではないのか、本当に正しいことを見極めることです。目に見えないことへの不安感から疑心暗鬼になり、どんどん増長されていくのが風評被害というものです。
また現地に入った奥田シェフが今被災地で一番大切なのは「被災者と同じ目線に立ち、話しを聞いてあげること」なのだそうです。震災直後と違い救援物資も全国から届き、たくさんのボランティアによる炊き出しも行なわれています。しかし、そうした物的支援だけでなく心のケアがこれからもっと重要になってくることでしょう。
行きと同じルートを帰る道すがらもう一度「自分にできることは何?」と問いかけてみました。
このような有意義な場を設けていただいた協会スタッフの方々、奥田シェフ、伊藤シェフ、岩手県の中南さん、坂田さんに心より感謝します。
レポート : 野菜ソムリエ 高野 和子
(プロフィール)
資格取得時3歳だった息子ももう小学5年生。妹も加わりにぎやかな毎日です。野菜中心の食生活とバレーボールが元気の源♪
ブログ「子どもと野菜生活」


