作り手のキモチシリーズvol.18 トマト加工品トップメーカー『カゴメ』に迫る!
日時:2012年6月7日 14:00~16:00
場所:協会本部A教室
講師:カゴメ株式会社総合研究所主席研究員 稲熊隆博 氏
本日のワークショップは、カゴメさんが提案する“ベジ・ミーティングスタイル”で!
カゴメさんの社内ミーティングではお茶の代わりに野菜ジュースが出るそうです。
そのスタイルをベジミーティングと呼んでおり、今回のワークショップもジュースを飲みながらスタートしました。
ワークショップはカゴメさんのご紹介から始まりました。
明治32年の創業。
最初は、西洋野菜の栽培をされていました。そこでできたトマトを売りに出されていたようです。
しかし、当時の日本では、まだトマトの歴史は浅く、余り売れなかったそうです。
そこで、創業者である、蟹江一太郎氏は考えました。
ヨーロッパにあるピューレ状のトマトを日本でも作って販売してみたらどうだろう・・・
カゴメさんにとって、最初のトマト加工品、トマトソース(現在のトマトピューレ)の誕生です。
その後、トマトケチャップやウスターソースの製造、昭和に入ってからは、
トマトジュースの製造販売に着手するようになりました。
それ以降、私たちのよく知っている、キャロット100シリーズの発売、野菜生活100販売などなど、
調味料製造中心の会社から飲料製造中心の会社へと進化を遂げたのでした。
いまや、日本の緑黄色野菜摂取量の12%をカゴメさんが占めているそうです。
カゴメさんについてのお話しが終わり、
次は『野菜の栄養と摂取方法』ということでお話しを伺いました。
まずは、寿命について。
稲熊氏は、寿命は遺伝子が関係するというよりも、どういう食べ方をするかで
寿命が変わってくるのだと説明。
特に独身男性は、3500日、寿命が縮むという報告があるそうです。それは、独身男性は、
一般的に生活や食事が不規則になったり、野菜不足になるからと考えられます。
また、南蛮貿易などで、西洋の野菜が入ってきた1600年頃から、寿命が延びていると、
野菜の種類も寿命に影響しているかもしれません。とはいえ、健康日本21の最新版には、
日本の男女の寿命は男79.64歳、女86.39歳(2010年)と、年々長寿傾向にありますが、
健康寿命を考えると、寿命は野菜摂取と密接な関係があるのではないかと指摘されていました。
そこで、長く健康で暮らしていくために必要な野菜について、もっと詳しく解説してくださいました。
緑黄色野菜とガンのリスクについて。
野菜を食べないで、肉を食べ、酒・たばこをする人のガンのリスク発生率を1とすると
緑黄色野菜を食べるだけでリスクが半分にあるという報告が!
その緑黄色野菜ですが、野菜の色にその効果があることがわかってきています。
もともと植物は、自分を守るために色を持つことになりましたが、その植物(野菜)を人間が摂取することで、
人間自身も守れる可能性というのが、見えてきました。
その例として、いろいろな実験例をもとに、説明してくださいました。
【臍帯血、母乳とトマト】
妊娠中に、トマトジュースを飲んでいた人の血液とその方の臍帯血のリコピン濃度を測ったら、
飲まない人の2倍以上に増えていたそうです。赤ちゃんはお腹の中で成長するためにも、
リコピンをはじめとするカロテノイドが重要なのではないだろうかと説明されていました。
また、母乳も同じことがいえます。
【アレルギーについて】
ニンジンジュースをアレルギー症状のあるマウスに飲ませたら、アレルギーのないマウスと同じ値にまで
数値が下がったそうです。これなら、アレルギーに悩む人間の子供たちにも同様の効果があるのでは?
【アトピーや喘息】
もともと、喘息の人の血液中にはリコピン量が少ないそうです。そんな方達に、やはりトマトジュースを
一年間飲んでいただいたところ、3ヶ月ごろから症状が改善されたそうです。救急車で運ばれる回数が減った。
入院回数が減ったという結果も。QOLが大きく改善しています。
【トマトと美容(シワ)】
細胞試験ですが、リコピンがあることで、紫外線をあててもコラーゲンの減少を抑制する効果があるとのこと。
同様に、夏の日焼け対策にもリコピンは効果的。普段から摂取している人は、日の焼け方が違うとのこと。
【お酒やタバコとトマト】
お酒の好きな人は、血液中のリコピンなどのカロテノイドの量が少ないそうです。
アルコールを分解するときに、活性酸素を発生させるので、やはりリコピン摂取があると
活性酸素から体を守ってもくれますし、酔いも冷めやすいという効果もあるとのこと。
【メタボについて】
メタボ指標には、HDLコレステロールが。その値が40mg/dl未満だといけない。
リコピンと同様、カロテノイドのひとつであるカプサンチンを摂取することで、HDLコレステロールを
増加させることができるとのこと。上記以外にも、リコピンと前立腺ガン、リコピンと骨粗鬆症、
脳卒中とリコピン、アルツハイマーと紫ニンジンなどの関係性や効果について伺いました。
とにかく、リコピンを始めカロテノイドを摂取すると言うことは、いろいろな病気の進行を遅らせたり、
改善したりできることがわかりました。
《野菜の摂取方法》
ただ食べるだけではダメ。栄養成分が吸収されなければならない。ということで以下の提案がありました。
提案①:野菜を買うときは、品種、旬、熟度を見ましょう。
・トマトの場合、品種がピンク系と赤系では赤系の方が栄養価が高いそうです。
・旬の野菜は栄養価が高い。
・熟度はピーマンを例にした場合、緑(未熟)より赤いピーマン(完熟)の方がダントツに栄養価が高いです。
提案②:調理をしましょう。
・加熱するとリコピンは吸収されやすい。
・野菜は生よりも、調理した方がカサが減るので食べやすくなる。特にトマト鍋をお勧めされていました。
スープにも栄養がしみ出すので一緒に摂取しましょう。
提案③:野菜加工品を利用しましょう。
・オムライスはトマトケチャップを使用するので、リコピンを摂取することができ、糖の吸収を穏やかにしてくれる。
《感想》
とにかく、2時間のセミナーでしたが、ためになる情報だらけで、その情報量の多さにメモ魔と化しておりました!
稲熊先生のお人柄もありますし、本当に楽しいセミナーで、時間を忘れてずっと聞いていたいくらいでした!
何はともあれ、実際に実験で証明されたことの例をたくさんご用意くださり、お話しされていたので、
全部が全部事実として、納得!恐るべし、リコピンパワー!
野菜の色には、ちゃんとワケがあるんですね!野菜と色の話しがあまりにも面白かったので、
関連書籍を何冊も購入してしまいました。
レポート作成
吉田めぐみ アクティブ野菜ソムリエ・料理研究家
大手食品会社のレシピアイデア提案、レシピ開発業務に従事。
子育てファミリー向け情報誌Happy-Note【ハッピーノート】(ミキハウス子育て総研)にて、レシピ連載中。
Twitter(@yoshidayome)にて、野菜や料理のつぶやき、質問受付の活動も。