知られざる野菜果物の物語『ベジフル秘話ヒストリア(ヨーロッパ編)』
開催日時:2012年9月11日(火) 14:00~16:00
場所:協会本部渋谷A教室
講師名:石戸谷 学 先生
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今回の講座では、
長い歴史の中で多くの野菜・果物が
世界各地からヨーロッパにもたらされ、さらにヨーロッパ全土に広まっていった過程
を歴史・人物・絵画を通して楽しく学びました。
◆ベジフルヒストリー
(1)トマトロード
野菜の王様と呼べる存在になったトマトが、何故世界中で食べられるようになり、
どこから来て、どのように広まったのか、
「トマトロード」なるトマト伝播の歴史を辿りました。
原産地である南米アンデスの太平洋側。
トマト栽培が盛んに行われていたアステカ王国(現メキシコ)を征服したスペイン人によって、
1500年前半に他の野菜と一緒にヨーロッパに上陸。
ただし、スペイン人がトマトを食用としたのは、上陸から約200年後。
その空白の時間の背景には、未知の食材への疑心だけでなく、
スペイン帝国の国王フェリペ2世の存在もありました。
トマトを最初に食べたとされるイタリア・ナポリ。
何度も起きた大きな飢饉をきっかけに、トマトが食べられるようになりました。
最初は食用向きではなかったトマトを長い時をかけて改良を重ねたという歴史に、
今年5月の野菜ソムリエサミット<トマト>でお話を伺った作り手の方と重なるものを感じました。
その後、ナポリで“あること”をきっかけにトマトとパスタがマリアージュした料理が作られ、
わずか数年でイタリア全土、そして近隣国へ。
最後に、自国の芸術文化発展に大きな業績を残したとされる
オーストリア皇帝ルドルフ2世の絵画作品を鑑賞。
トマトロードを知って初めて頷けるエピソードがそこにはありました。
(2)貧者のパン
栽培面積、世界4位を占めるジャガイモ。
トマトと同じく、南米大陸からスペイン人によってヨーロッパに伝わりました。
ジャガイモが「貧者のパン」と呼ばれる理由には、
ヨーロッパ各国を度々襲った飢饉や戦争の中で、
底辺で苦しむ人達の生きる糧としてジャガイモの地位が確立していた歴史的背景がありました。
原産地はアンデス山地。
1500年中頃にスペインに上陸しましたが、
様々な理由で食用に至るまで時間がかかりました。
一方、気候条件が合ったドイツとアイルランドでは栽培が奨励されました。
特にアイルランドでは、16世紀末に伝わってからわずか100年後には主食の地位へ。
ところが、19世紀中頃の疫病がきっかけで国土全体の9割のジャガイモが被害を受け、
大飢饉の結果、多数の犠牲者やアメリカへの大量移住者へと
食がもたらした人々への影響は大きなものでした。
18世紀のフランスでは、ドイツ在住経験のあった農学者により、様々な方法でPRされ、
次第に国全体に普及しました。
また、イギリスでも、隣国アイルランドの影響もあって普及し、
さらに産業革命を機に生まれた労働者階級の中心にして
今でも残るイギリス伝統料理が生まれるきっかけとなりました。
(3)春の再生を意味した果物
生食用・ジュース用・香料として多種多様に使われているかんきつ類の王様オレンジ。
原産地はインド・アッサム地方。
イスラム教徒を通じてヨーロッパ本土へ持ち込まれ、
後にコロンブスの手によってアメリカ大陸へ伝わりました。
「太陽王」「美食王」と呼ばれたフランス国王ルイ14世は、
敷地内に畑や温室に作らせ、中でもオレンジ温室は最高傑作だったとか。
中世ヨーロッパでオレンジの木は、冬に実を結ぶことから、
「再生と春の到来」を祝う儀式で用いられました。
丸い形から、太陽のシンボルとしてみる地域もあり、
19世紀末までには、オレンジは高級果実としての地位が続きます。
◆西洋絵画の世界に見る野菜果物
キリスト教によって、食事に神聖な意味が与えられ、
食事の情景が美術の中心を占めたことから、
西洋の文化・芸術を知る上で「食」は切り離すことのできない存在となりました。
その中で、西洋絵画に多く描かれた野菜・果物は、単なる絵の題材としてではなく、
宗教的な意味合いを持たされていると美術史の専門家は指摘しています。
講座では、具体的に作品を見ながら、描かれた野菜・果物が意味するものを紐解き、
思いを馳せる旅に出掛けました。
◆受講を終えて
今回のベジフルヒストリーを巡る旅では、
「食から絵を見る視点」「食から歴史を見る視点」
という新たな切り口から、これほど興味深い世界があるということを、
自分自身が感動し楽しんだ2時間でした。
特にジャガイモについては、私にとって感慨深いものがありました。
学生の頃、アイルランドに留学経験があり、
当時ホストマザーに教えてもらった何種類ものじゃがいも料理のおいしさ・あたたかさは、
今でも大切な「食の記憶」の1つです。
現地の方が語り継ぐpotato famine(ジャガイモ飢饉)は、
苦しい時代を乗り越えて力強く生きてきたアイルランド人の誇りであり、
偶然ながら今回その歴史に再び出会えたことがとてもうれしかったです。
今回の受講では、貴重なベジフル秘話を学んだだけではなく、
野菜ソムリエとして、自分がどんな切り口や手法で野菜・果物の魅力を伝えられるのか、
をあらためて考える非常に良い機会になりました。
プロフィール:野菜ソムリエ 杉山 真代
自動車部品メーカー勤務。
社内アグリ事業部への異動と活動を未来予想図に描き、
コミュニティでの経験や講座参加を中心に勉強中。
野菜・果物で”宝食”を育む野菜ソムリエを目指します。

