知っておきたい青果物の流通のいま
開催日 :2013年10月17日(木曜日)19:00~21:00
講 師 :株式会社農経新聞社 代表取締役社長 宮澤信一 様
場 所 :協会本部 渋谷A教室
「ない!!ここにもない!!」スーパーもコンビニも、棚に品物がない日が、
何日も続いた。それは、3.11、あの震災の後のこと。東京に住む私は、
かろうじてスーパーの棚にあった。一つの林檎に、1000円支払い帰宅。
同じマンションに住む小さな男の子が、震災のショックで何日もお腹を壊し、
ずっと林檎が食べたいと言っていた。その子に、ただ林檎を渡すだけなのに、
嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
今思えば、私達は「流通」があって始めて生活できていたんだと、
実感した瞬間だった。
野菜ソムリエの中級講座では、この「流通」についても学ぶ事ができる。
『必要な時に、必要な物が、必要な量だけ、必要な時間に、必要な状態で』
届けられるような国は、日本以外にはないのではないか?と講師がおっしゃっていたことが
思い出される。
今回、流通のプロでいらっしゃる宮澤先生のお話を伺った。満席の会場には、
同じ流通のプロの方々もいらしているように見えた。
講座内容は、大きく分けて6つ。
1. 卸売市場の多段階流通の意味
2. 日本の農業生産は、農協が支えている?
3. 我が国の野菜生産・出荷量
4. 食糧自給率をどう見たらよいか?
5. 日本における青果物摂取の実態
6. 消費税率アップで食料支出はどう変わる?
〈 講座内容 1 〉
とにかく取り扱う商品は、「生もの」つまり、天候などにより左右され、
収穫量も品質も常に不安定な野菜・果物。卸、仲卸、JA、輸送、スーパー等、
様々な場所があるおかげで、安定供給が出来ている。
しかし、卸の平均営業利益率はわずか0.12%、仲卸では0.2%。
(ちなみに、ソーシャルゲームで有名なパスドラの運営会社の、
今年1月~6月までの営業利益率は、なんと61%)利益がほとんどない中、
過酷な現場のお仕事をしていらっしゃる皆様には、本当に感謝しなければならない。
〈 講座内容 2 〉
農協離れが進んでいるとのこと。原因としては、高齢化や、共選料が高かったり、
新規就農者を受け打入れない等あるが、JAから地方銀行にメインバンクを
変更するケースも増えているそうである。
〈 講座内容 3 〉
生産減少が指摘されることが多い野菜だが、
実は出荷量については、S.48年から比べ、
H.23年時点で殆ど変わっていない。
廃棄率が26%から16.4%へ減少している事は嬉しい。
ただし、農林水産省による予測は、H29年度、指定野菜14品目は、
最大2割の供給過剰となっている。そう聞くと、私の脳裏に浮かぶのは、
農家さんが畑で作りすぎた野菜をブルドーザーでつぶしている風景である。
改めて、不安定な青果物を安定して供給するのは大変なことなんだと思う。
果物の出荷量は、S.48年から比べ、H.23年時点で、60%も
減少しているのは、少し悲しい。
〈 講座内容 4 〉
さて、毎年気になる「食料自給率」。昨年度も日本は、39%だった。
(カロリーベース)金額ベースでは68%となる。たとえば、国産牛でも、
餌が輸入だと自給率に含まれない等、一定の決まりがある為、自給率を数字で表すのは
非常に難しい。ただ、カロリーの低い野菜に関しては、75%と高い。それは嬉しい事だし、
安心でもある。ちなみに果物は、やはり輸入が多い状態が続いている。
〈 講座内容 5 〉
青果物摂取量はどうだろう。日本は基本的に減ってきている。
今後、単身も増え人口も減少し、格差が広がると予想される未来の日本で、
野菜・果物の消費は、はたして増えるのだろうか?
実際、食の欧米化や偏りなどにより、癌や脳梗塞、鬱、といった
現代病は増えて続けている。国としても食事バランスガイド等で、
野菜・果物を一日350グラム食べよう!
という目標値は設定しているものの、なかなかクリアするのは難しい。
やはり国と行政が一体となり、
野菜・果物の魅力を広める努力が必要である。
それは地道にコツコツとはなるが、
私達野菜ソムリエは、
そのかけ橋となる重要な役割を持っていると感じる。
〈 講座内容 6 〉
来年から消費税率が上がる。アベノミクスとはいえ、急に収入が増え生活が
楽になったわけでもない。しかし多くの人が、食費は減らしても、
スマホの通話料に払う金額は増やし続けている。
消費税率がどんどんアップしても、スマホは手放さないだろう、と、宮澤先生は
懸念を示している。
私も、スマホを持つこと自体は人生の楽しみ、仕事の発展など、
とても助かるので、持った方が良いと思う。しかし、何事も「健康」あってこそなのである。
もし、スマホが壊れたら買い変えればよい。
しかし、体が壊れても、買い変えることは不可能である。
みなさん一人一人が健康で、幸せに暮らしていく為に、少しでも野菜・果物を食べよう!
と心がけて下されば、結果お店も、流通も、卸売業者さんも、
生産者さんも、多くの皆様が活性化され、
日本という国自体の「健康」へと繋がるのではないか!
〈 まとめ 〉
「流通」を知ることは、実は日本という国自体を知る事でもあり、
自分自身を知る事でもあると思う。
決して他人事ではないのである。
今回は、流通の「いま」について宮澤先生よりお話を伺う事が出来た。
講座のすべてをご紹介できないことが残念である。しかし次回があるのなら、
もっと深く、より未来にスポットをあてて、宮澤先生ご自身のご意見をお話頂く機会が
あることを願っている。
講師の宮澤先生は、難しそうなお話を分かりやすく、しかも声優さんのような
良い声で、熱意をもってお話して下さいました。宮澤先生、有難うございました。
最後に、このレポートをお読みくださった「あなた」の、
一層のご健康とお幸せをお祈りいたします。
レポート 伊藤 友子
野菜ソムリエ・ベジフルビューティーアドバイザー・食育マイスター
自身も自然食、自然療法を10年以上実施し、食生活は人生を変えるほど
大切なことであると実感。
バランスの良い食事は、体だけでなく、心や生活の健康へと繋がるとの思いで活動中。
農林水産省、『こども霞が関DAY』にて、「魚と野菜」というテーマで登壇。
東京都行政書士会イベント、「福島から食を学ぶ」にて、
パネルディスカッションのコーディネーター担当。