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実るプロジェクトvol.4「野菜・果物の伝え方」

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日時:2017.3.4(土) 13001530 

会場:日本野菜ソムリエ協会福岡支社

講師名:田中 稔

講座名:実るプロジェクトVol.4 「野菜・果物の伝え方」

 

本講座は座学・実践・試食の3部構成。“野菜・果物の専門家として、野菜・果物の魅力をどう伝えるか”について考える、
内容の濃い2時間半でした。

まずは座学。
印象に残った講師の言葉をもとに振り返ります。

●“足し算の料理”から“引き算の料理”へ
ご自身で野菜をつくるようになってから、料理の仕方が変化したそうです。例えばトマトを料理する場合、“トマトががんばっている味”を感じるようになり、そのトマトの味を味わう舌を持つようになった。更に商売として万人受けするために試行錯誤をした結果、最終的に、シンプルな家庭料理が一番だ、という答えに行き着いたそうです。あれこれ手を加えず、素材の味を味わうことを大事にしたい、と。私たちが普段口にしている食事はちゃんと素材の味がするだろうか…外食や中食は、そうでないことも多いな、と思います。素材(原点)に意識を向ける…当たり前のようでいつの間にか忘れられていることかもしれない、と気づかされました。

●“おいしさ”には個人差がある
「野菜ソムリエがすすめたトマトは果たして本当においしいのか!?」投げかけられた問にハッとしました。参加者全員で2種類のトマトを食べ比べ。各々おいしいと感じた方に挙手したところ、2つに分かれました。“おいしい”に正解はなく、食べる人(お客様)によって好みは違うのだ、ということを改めて認識しました。

●自分なりの“おいしい”を見つけ、それを掘り下げる

講師おすすめの石山トマト。以前お客として食した際に気に入り、料理人を通じて生産者に会いに行かれたそうです。生産者とのご縁により、更に石山トマトへの愛着が強くなり、今度は伝える側として、生産者のおもいも乗せて、トマトの魅力を発信し続けているというお話。野菜は生産者のこどもみたいなもの。気軽に『○○っていいですよ~』ではなく、野菜ができた経路を知ることが大事。野菜・果物について発信する側の“責任”と“熱意”について、深く考えさせられました。

170304_2●香りを味わう、鼻に抜ける風味を感じる
見た目が綺麗な人参と割れている人参。全員で見て触って匂いをかぎました。割れている人参の方が人参らしい「青々しいにおい」がしました。どちらの人参にも育てられた環境や経緯があることを教わりました。見た目重視で育てられたものとそうでないもの、どちらもあってよい。ただ、食材の香りに敏感になることで、自然の中で育った野菜・果物に対しての愛着が涌いてくるのだ、というお話に、とても共感しました。

●料理は奥が深い
レシピ・調理法・技術などの基本はもちろん、プロとして仕事をする上ではセンスが必要というお話。講師の地元愛知県の伝統野菜、天狗なす。その食材のよさ(とろなすと呼ばれる程トロトロしている)を引き出すには、夏はフライパンで焼く、910月には油で揚げる、調理法が最適だそうです。季節ごとに調理法を変える、調味料を考える、併せる食材を選ぶ、など“食材が最も活きる方法”を模索して提供する、イコールセンスを磨く、ことも大事なのだと勉強になりました。

  

続いて実践編。Photo_3●蛇腹切り、お手並み拝見!

「料理教室の先生もいるし皆さんできるでしょう」との前置きがあり、まずは講師がお手本を。包丁の持ち方、刃の角度を利用して切る、など、貴重なお言葉と同時にサクサク動く手。見惚れている間に、講師の前できゅうりがとぐろを巻いていました。

用意されたきゅうりを前に、全員が格闘。私も思い切って蛇腹切り初挑戦。私のきゅうりはとぐろなんておろか曲がりもせず…。包丁の入れ具合が浅すぎたのが原因とのこと。講師は参加者全員のきゅうりをチェックし、アドバイスをくださいました。今回は3名の方が出来栄えを褒められていました!私も、これから頑張ります!

9種類の生野菜(バーニャカウダ用)を盛り付けてみよう!
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こちらも講師のお手本あり。立体感と色のバランスが大事とのこと。全員実践。「なかなかいいですね」「お、斬新ですね」などあちこちで講師の声。各人の発想を尊重した上で的確に手入れしてくださり、参加人数分のパターンで勉強できる、ありがたい機会となりました。

 

実践の後、講師ご自慢のレシピ4品を試食。どれも、素材の味が活かされていて風味があり、座学で学んだことを復習できるような、“2度おいしい”時間を頂戴しました。

 

食べながら『おまけ』として、“プロフェッショナルであること”についてのお話がありました。

・楽しいと思うことをやり、“おもい”が人に伝わる仕事の仕方をする

・技・知識を相手に理解してもらう努力をする

(トップの人たちと絡み続けることで、自分を追い込み、腕を上げる)

(見積書を必ず提出する、事務所を構える、部下を育てる、交渉は自分以外の人を立てる、など)

10割の人がおいしいというものはヒットしない、嫌いな人もいるというものの方がヒットする

(例:パクチー料理でパクチーらしさをどの程度出すのか、の塩梅)

・人に頭を下げる

(分からないことは聞く、若い世代の意見に合わせる柔軟性を持つ、など)

 

参加しての感想】
人に何かを伝える際、まず話し手である自分が、話す対象物に愛情と情熱を注ぐことが
大切だということが身に染みて分かりました。自分の意見を披露して満足したり押し付けになっていたりすることがないよう、客観的な視点を持つ必要がある、など気づきが多く、
大変勉強になりました。講師の一言ひとことに説得力があるのは、食の専門家として
熱意を持って仕事に向き合っておられるからだと感じました。

今回学んだことを「青果物を販売する自分へ落とし込み、少しずつでも実践していきたいです。また、野菜・果物を含めての“自然”を愛する人でありたいなと改めて感じています。
楽しくて興味深いお話を聴けてよかったです。ありがとうございました。

 

作成者:東郷かおり

野菜ソムリエプロ。食べることが好きで食べ物を与えると上機嫌になる。

現在は八百屋に勤務。目標は、野菜・果物の個性を理解して、野菜・果物の代わりに“よさ”を伝えられるようになること。人づきあいでも、個性を認め合う関係性を目指している。