「八百屋が教える「産地と食卓をつなぐ青果物の流通について」第2弾
八百屋が教える「産地と食卓をつなぐ成果物の流通について」~売り場づくり・接客・販売計画~
●講座名:八百屋が教える「産地と食卓をつなぐ青果物の流通について」第2弾
●日時:2017年6月14日(水)19:00~20:30
●講師:永利 裕子さん 「九州やさい日和」代表、野菜ソムリエプロ
●場所:日本野菜ソムリエ協会 福岡教室
永利裕子先生の八百屋視点の流通講座の第2弾が開催されました。
永利先生は野菜ソムリエプロを取得されて10年以上、農家さんが丹精込めて作った野菜や果物をお客様に届ける「野菜のプロデューサー」として、八百屋の店舗の立ち上げや運営・お料理教室と幅広くご活躍されています。
八百屋の販売として、1番大事なことは「お客様に喜んでもらって、利益を出す。」
対面という販売方式で、いかにお客様に喜んで購入していただくか、そのポイントを、①売り場づくり ②接客 ③販売計画に分けてお話しいただきました。
まずは永利先生手作りの梅ジュースのウエルカムドリンク。夕方の少し疲れた体に優しいお味でした。
①売り場づくりについて
〇加工
販売する値段から逆算して、規格(量)を決める。
値段をきめ、その値段に見合う量で袋詰めする。
トマトも、走りの時期は個数を少なく袋詰めし、買いやすい値段で提供する。終わりの頃は、箱売りでお得感が出るように販売するというような規格を決める。
袋詰めの方法もニンジンは袋の底に葉のついていた方を揃えるなど、並べたときの見え方を意識して袋詰めする。
〇値付け
価格は2~3割が利益になるように設定する。
お客様の心に訴える値段(98円、198円、258円ナド)にする。
〇陳列・ディスプレー
基本は「どこに、なにを、いくつ、どんなふうに」ならべるか。
・店頭
店頭はの商品は売り上げの半分を占める「売り筋」の商品をおく。お客様の目がとまるように「大きいもの」、や心動かされる「旬のもの」を意識する。店の外に出て、お客様をキャッチできるような並びや彩りになっているかチェックする。
・店内…平面
お客様のほとんどは右利きなので、左手にかごを持ち、右手で商品を手にとるので、店内を反時計回りにまわる。それを意識して商品を並べる。
・店内…上下
棚の上に置くもの、下に置くもの考えておくと違和感がない陳列が出来る。
ポイント1「自然の実の付き方にそって置く」根ものは下に、葉物や実物などは上に。
ポイント2「価格にそっておく」同じ商品なら、お買い得品を下に、価格の高いものを上に。
ポイント3「重さにそっておく」キャベツや大根など重いものは下に、トマトやシイタケなど軽いものは上に。
・全体
ものが多い方が購買意欲がわくので、商品が多くあるように見せる。
売れるものは幅を広く(フェイスを広く)おく、棚の前面に商品をそろえる、箱に入れたものは底上げしてボリュームがあるように見えるようにする。
〇POP3つのコツ
・文字の間隔を詰める・文字をとがらせない・強弱(字の大きさ、線の太さ)をつける。
高く売りたいときは「朝どれ」など付加価値が上がるような言葉を入れてみたり、売れ残りそうなときは「人気で残りわずか」など意欲がわくような言葉を入れるなど、値段を下げる以外で売る工夫も。
②接客について
〇親しみやすく、礼儀正しい接客
〇笑顔で明るく大きな声で
〇お客様は何を求めているのかを考える…お客様に応じて商品を選び、信頼をしていただく接客が重要。
③販売計画について
知っておきたい数字は「粗利」と「粗利率」。
〇粗利とは売り上げから仕入れ値を引いたもの。
粗利から経費を引いたものが、営業利益になるので、経費以上の粗利がないと、経営が成り立たない。
〇粗利率は売り上げに対する利益の割合。
利益生むための売り上げ目標を立て、販売スタイルを考えて粗利率を決める。
〇細分化する「10万円/日の販売計画」
どういうものをどれくらい売るか、細分化して考える。
計画をつくり、それに沿って商品を仕入れる。ものが無いと売れないし、ただあるものをただ売るだけでは、目標は達成できないので、何をどれくらいどう売るかを考えて仕入れ、販売する。
毎日コツコツと達成していかないと、夏休みの宿題と一緒で、売り上げが足りないから、月末にがんばるといっても簡単に達成はできない、という、耳が痛くても分かりやすいたとえで説明されました。
残り時間は、永利先生が日本中、世界中の市場を視察したものの紹介でした。
沖縄牧志公設市場、神戸大安亭市場のフルーツのながお、京都八百一の六角農場、山梨のアマノパークス、韓国ソウルの広蔵市場、タイのミニスーパー、ベトナムの水上マーケット、ハワイのホールフーズマーケットなど、八百屋目線で世界の市場を解説されるのも、マニアックどころか、野菜ソムリエとしてとても興味深い時間でした。
心に残ったのは「今日の分をお客様に無理やり販売することもできるけれども、そのような接客ではだめで、信用してもらえる接客をすることが大事。常設の店舗は逃げも隠れもできない。」という言葉でした。
農家も八百屋もお客様も、みんなが幸せになれるような売り方に尽力され、野菜のプロデュースという仕事に誇りを持っていらっしゃることを感じた90分でした。もし可能ならば、第3弾も希望いたします。
レポート作成者:くりた ひろみ 野菜ソムリエPro./受験フードマイスター
野菜ソムリエグループ「ちくフォー」のメンバー。個人では「お母さんの応援をする野菜ソムリエ」として、おやさい教室「あまぐりきっちん」を開催。休日は体験農園で祖父母・夫婦・こどもの3世代で野菜づくりを楽しむ。作るのが好きな野菜はニンジン。